えがおで りんと このばしょで

表現者であり女・小沼枝里子のあれやこれ。

「二度とその目に彼女を映すな。」フランソワ・ド・モーリアックas竹之内勇輝

実際は6つも年下なのに、正直もう年上だとしか思えない(笑)
本番期間中はたくさん甘えさせてくれてありがとう。

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マルグリットのパトロン、フランソワ・ド・モーリアック役の竹之内勇輝くん。
オーディションからの参戦です。
もう散々言ってるけど、小沼の最推し(笑)

 

solaさんからご連絡を頂いて、オーディションにお邪魔したのが4月末頃のこと。
冒頭シーンの読み合わせのお相手をさせて頂いたのですが(「盗もうかしら」云々のとこ)、彼の持つ不思議な色香にびっくりしたことを今でも覚えています。
「色気」のある俳優さんは割といるけれど、「色香」というニュアンスで表現出来るものを持った俳優さんてあたしあんまり知らなくて。

もうひとつ、所謂「闇」「陰」の側面が垣間見えたこと、それがおそらく奥深くまで拡がっているのに、一滴もこぼさずに持っていこうとしているように見えたことも興味深くて。
それは、読み合わせの後のsolaさんのWSの様子を見ながら感じたことです。

しかし、お芝居始めたのは昨年の10月からって言うんだから驚き。

 

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モーリアックの亡き妻に生き写しだというマルグリット。
最初は奥さんの代わりだったのかもしれないけれど、何というか、モーリアックのマルグリットに対する感情というのは、愛でも恋でもないもっとやりきれないものだったような気がしています。

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マルグリットにとっても、最初はその他大勢の男のうちの一人で、自分を可愛がってお金を出してくれるなら何の文句もありませんでした。
パトロンなんて他にもいたし。

でも、愛とも恋とも似つかないそれを向けられているうちに、間違いなくマルグリットにとってもモーリアックは「特別」な男になっていきました。

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オランプが冒頭で「あの人はお父さんみたいなものなのよ」とガストンに言っているけれど、その言葉の通り、強いて言うならば「家族」のようなものだったのかもしれません。
マルグリットにとっては、一番縁遠い言葉だけれどね。
父のような、兄のような、もしかしたら夫のような、でもそのどれでもない。
ある意味では、アルマンとの関係よりも危ういバランスの上に成り立ってたんじゃないかな。

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モーリアックが完全に「恋心」のようなものを自覚してしまったのは、アルマンの存在が多分に影響しているだろうなぁ、と思います。
アルマンが来たことを察して、何も言わずに去ったモーリアックさんの、座っている時の横顔。
照明も暗いし、表情なんて一切見えないのに、それでも忘れられません。

 

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拳銃を手に、恋心を、心臓を賭けるギャンブル。
小沼としては大好きなシーンだけど、…やっぱり、苦しかったな。

 

過去を知ろうとしないこと、それは罪だ。今目の前で起きていることも、それ自体で完結することはない。それまでの流れで、必然として生まれて来たものだからだ。
私はマルグリットの母親を知っている。

憐れな女だったよ。夜に生き、夜に死んでいった。もちろん、そのことを断罪するなんて誰にもできやしない。だが、自分が生き延びるための日銭を稼がすために娘に同じ道を歩かせることは許されることではない。少なくても私はそう思っている。だから、彼女を買ったんだ。

 

公演三日目の夜、下記の台詞の赤い部分が足されました。

正しい選択とはなんだろうと私はいつも考えてきた。たまたま見掛けた一人の女性のためを守ろうと必死に金を貯めてきたが、これは愛ではないように思う。人を愛するとは、やりきれなく、腹が立ち、感情では憎みながらも、心臓では愛さずにいられない、そういう細胞の衝動のようなものだったと今思い至った。ああ、すべては過ちだったのかもしれないな。
それでも、私は……

 

「きっと、同じ選択をするだろう。」

 

ひとかけらの恋心をアルマンに託して、モーリアックさんは息を引き取ります。

 

「モーリアックさんは恨んではいませんよ。あの人ほど正しい人はこの世にはいないんだから」

これは、ラストシーンのマルグリットの台詞だけれど。
善人かどうかも、正しいのかどうかも、誰にもわからないし世界にとってはどうでもいいこと。
けれど、己の決めた「正しさ」を最期まで貫いた人だったと思います。

 

最期にあたしを「買った」のが貴方で良かったわ。ありがとう。